精神科デイケアにおける
リカバリー支援

心理教育プログラムの
標準的実施の可能性

研究の概要

精神障害がある方の地域生活継続のために、精神科デイケアは生活支援の場であると同時に、治療やリハビリテーションの機能を強化することが求められています。IMR(Illness Management and Recovery : 疾病管理とリカバリー)と呼ばれる心理教育プログラムは、当事者の方が自身のリカバリーを考え、症状の軽減や再発予防のための疾患マネジメントやソーシャルサポートについて体系的に学ぶことができるものです。症状や機能の回復を指す「臨床的リカバリー」と自らの希望に沿った生活ができる「パーソナルリカバリー」の向上が報告されています。

  

本研究は、精神科デイケアにおけるIMRに参加した方の地域生活継続への効果を、いくつかの調査から明らかにし、精神科デイケアでリカバリー支援プログラムを実施することは、精神障害がある方の地域生活継続の支援につながるかを検討したものです。

研究
生活満足度およびリカバリー志向への効果-前後比較対象研究-

精神科デイケアにおけるIMRの効果を、「生活満足度」「リカバリー志向」、他者評価の「社会生活」の変化をアウトカムとし、IMR参加群20名と同じデイケアを利用し通常のケアを受ける対照群21名と前後比較しました。 その結果、IMR参加群の生活満足度尺度の合計得点と「環境」「社会生活技能」はIMR参加前後で有意に上昇しました。しかし、ベースライン得点を調整し分析すると両群の得点変化に有意差は確認できず、本研究の範囲におけるアウトカムでは、対照群と比較してIMR参加群の得点の有意差は認められませんでした。

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研究2
パーソナルリカバリーの変化-テキストマイニングによる分析-

精神科デイケアにおけるIMR参加者が前後に設定した「リカバリーゴール」と「それを実現させるための行動」の特徴を示す因子を質問紙の自由記述から整理し、パーソナルリカバリーがどのように促進されたか検討しました。記述された「リカバリーゴール」は「何かを得ること」から「どのような状態でいたい」に変化し、実現するための行動は、他者とのかかわりや就労、楽しみを作る等多様になり、活動の場が広がっていました。プログラムの構造により、参加者同士のピアサポートの力が活用され、セルフスティグマが低減し、リカバリーを促進する可能性が推察されました。

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研究3
パーソナルリカバリーの促進に影響する要因-参加後半年以上経過した方への面接調査-

精神科デイケアにおけるIMRに参加し半年以上経過した方へ面接調査を行い、次のことが明らかになりました。1)IMR参加後の生活で症状が悪化した可能性は小さく、リカバリーゴールは多様化し、それを実現するための行動の範囲が広がりパーソナルリカバリーは参加後半年以上経過しても促進されていました。2)パーソナルリカバリー促進に長期的効果をもたらした要因として、IMRで「目標設定と取り組み」や「疾病マネジメント」のスキルを得て日常生活に活かせたことと、参加者同士の交流によりコミュニケーションに自信を持て、仲間との情報共有により自分の病気に対する考え方が変化したことが考えられました。

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研究4
参加者同士の関係と参加者に対する実施者の関わり-リカバリー促進に有効な関係とは-

IMR参加によりリカバリーが促進される過程で、参加者同士の関係と実施者の関わりは重要と考え、IMR実施者を対象に面接調査を行いました。参加者同士の関係について、実施者はIMRの参加者同士が安心して、自己開示でき、互いに学び、ロールモデルを得ていることがリカバリー促進に有効だと考えていました。また、実施者は参加者が安心して発言できるよう関わり、一方で希望に沿いながら現実的に目標を修正して一歩踏み出せるよう関わっていました。参加者同士の関係を活かしつつ、参加者と実施者の二者間で目標に焦点を当てることがリカバリー促進に有効だと考えられます。

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新着情報

2022年6月4日(土)
日本精神保健看護学会第32回学術集会にて、口頭発表しました(オンライン)
演題名:IMR実施経験による精神科デイケアスタッフのリカバリーに対する考え方の変化
2022年2月26日(土)
日本精神科看護協会大分県支部主催研修
リカバリーを支援する心理教育プログラム「疾病管理とリカバリー(IMR)」 で講師を務めました